調停とグッド・ガバナンス

2011年1月17日

プロジェクトが始まってからおよそ半年が過ぎました。この半年間に、ワーキング・グル—プの立ち上げ、業務フローの作成、調停人候補者の公募、調停人養成研修の実施などの活動を行ってきました。現在のところ、裁判所における調停制度導入に向けて、プロジェクトは順調に進展しているといってよいでしょう。

日本では調停委員が主役のテレビ・ドラマがあるくらいなじみの深い調停制度ですが、ここモンゴルでは、数年前までは「調停」という言葉自体が存在しなかったことからも分かるように、調停は、全く新しい法制度です。したがって、現時点では、裁判官や弁護士といった法律専門家であっても、調停について深く理解している人はほとんどいない状況です。

ところで、本プロジェクトも,法整備支援というODAの一分野として行われているものである以上、調停制度の導入がどのようにグッド・ガバナンスに資するかという観点からの検討が不可欠です。この点、国民の司法へのアクセスの選択肢が増えるとか、簡易な事件が調停に振り分けられることで訴訟事件について裁判所の審理が充実するとか、利用者が満足する形で実質的に妥当な解決を図ることができるとかいろいろと理屈は考えられるところです。しかし、調停制度は、運用次第では、裁判を受ける権利を侵害したり、利用者が納得できない解決をしぶしぶ強要されたりする危険も併せ持っています。

モンゴルの裁判所は、現在のところ、調停制度導入について非常に積極的であると思います。しかし、民主主義的な法制度が導入されてからの年月が短く、先に述べたように調停についての理解も十分でない中で、安易に調停制度を導入したとしても、本当にグッド・ガバナンスに資することになるかどうかは微妙なところであるはずです。

今後、調停がモンゴル社会に根付いていくためには、裁判官・弁護士をはじめとする法律専門家が調停への理解を深めるとともに、一般の国民からも、調停が便利な制度であるという理解を得ることが必要不可欠であると考えています。そして、もっとも大事なことは、裁判所にとって便利な調停制度を構築することではなく、国民にとって便利な調停制度を構築することだと思いますが、これは非常に重要かつ困難な課題だと考えています。

今後このプロジェクトがどのような経緯をたどっていくのか、そして、どのような形でモンゴルの調停制度が発展していくのか、私の心の中では楽しみと不安が共存しています。

このホームページでは、プロジェクトの進行状況をできる限り実況していくつもりです。法整備支援としてこのようなことが行われているんだと、興味を持ってご覧いただければ幸いです。

JICA専門家 岡 英男

出典:JICA調停制度強化プロジェクト「プロジェクトニュース」2011年1月17日