調停制度強化プロジェクトフェーズ2開始にあたって

2013年4月1日

2010年5月から開始された「調停制度強化プロジェクト」は、プロジェクト目標である「全国での調停導入に向けたグランドデザインの提示」を達成し終了した。この成果を発展させるため、引き続き、「全国の裁判所での調停活用とモンゴルでの定着」をプロジェクトの上位目標とする、「調停制度強化プロジェクトフェーズ2」が2013年4月1日から開始されることとなった。

2012年5月22日、調停法が成立した。前プロジェクト関係者が中心となって作成した法律であり、日本の調停制度をベースに、パイロットコートでのモンゴル国独自の経験が加味された内容となっている。調停法には、全国の第一審裁判所で調停を行うことが定められている。当プロジェクトでは、この調停法の円滑な実施と、モンゴル国での調停制度の定着を支援することを予定している。

ところで、私は、前プロジェクト開始時、このホームページで、「調停の導入は、訴訟事件の減少といった裁判所にメリットを与えることが目的ではなく、国民にとって利用しやすい紛争解決システムを作ることが目的である」と述べた。この考えは、今も変わっていないし、むしろ強くなっている。調停のメリットを享受するのは、言うまでもないことであるが、第一にモンゴル国民でなければならない。そのためには、調停の手続・内容が適切で、国民にとって利用しやすいものであることが必須である。調停は、運用次第では、裁判を受ける権利を侵害したり、利用者が納得できない解決をしぶしぶ強要されたりするおそれがある。調停人のスキルアップも重要な課題であり、十分に訓練を受けた調停人でなければ、当事者が納得する形で円満に解決することは難しい。
このように、新しい制度の導入というのは、単に外見だけを整えるだけではまだまだ道半ばであり、中身を充実させる必要がある。「箱もの支援はいかん」とJICAも世論の非難を浴びて久しいが、この問題意識は正しい。
しかしながら、中身の充実というのは外見を整える以上に難題であることも確かである。人によって、立場によって、評価の方向によって何を持って中身の充実というべきかについての意見はさまざまである。また、かろうじて評価の基準が定まったとしても、われわれ外国人(モンゴル人からみて)には、実際のところ本当に充実しているのかどうかよくわからないところも多い。
「調停制度強化プロジェクトフェーズ2」は、中身の充実までも求められているという点で、実は最も困難な課題を内在しているのである。これまで以上に、モンゴル側関係者の自主的かつ積極的な活動が求められるし、日本側としても、日本の苦手とする問題発生時に迅速に対応できるような形での支援が必要となってくるであろう。

私は、前プロジェクトから引き続き、フェーズ2についても、プロジェクトを担当する運びとなったが、一貫して考えているのは、以上のようなことである。このページをご覧いただいている皆様には、モンゴルでの今後の調停の発展について注視していっていただきたい。

JICA専門家 岡 英男

出典:JICA調停制度強化プロジェクトフェーズ2「プロジェクトニュース」2013年4月1日